1. Turbo Boost を有効にしたまま、手軽にオーバークロックしたい
CPU クーラーを交換したので、定格で運用していた PC をオーバークロックすることにした。
リテールのクーラーでは、すぐに温度が上昇してしまうため、
CPU が頑張り過ぎないように制限していた。
対象の CPU は インテル Core i7 860。マザー・ボードは ASUS P7P55D。
このマザー・ボードには、自動でオーバークロックに適した値を探ってくれる Ai Overclock Tunerという機能が付いている。これを利用し、確実に動作する値に設定された後、微調整することにした。
電圧を盛り、ギリギリを目指すのではなく、実用的な範囲でカジュアルなオーバークロックを行う。その際、Core i7 で利用できる Turbo Boostを利用したい。
Turbo Boost が無効であることに気づいてなかった
Turbo Boost とは、一時的に CPU の動作を高速化する機能。
インテル® ターボ・ブースト・テクノロジーに関する FAQによると、
インテル・ターボ・ブースト・テクノロジーとは、自動的に定格の動作周波数より高速でプロセッサーを動作させる機能です。ただし、プロセッサーが電源, 温度, 電流仕様の TDP (熱設計電力: Thermal Design Power) の限界未満で稼働している場合に限られます。この機能により、シングルスレッドとマルチスレッド双方のアプリケーションでパフォーマンスが向上します。
以下の表に、どのくらい周波数が上昇するか示されている。
ターボ・ブースト・テクノロジー・モニターを利用すると、Windows 上で Turbo Boost が効いている様子がグラフで示される。
このアプリケーションをインストールしようとしたところ、エラーが表示された。
このコンピューターにはインテル(R) ターボ・ブースト・テクノロジー対応のプロセッサーが搭載されていないため、インストールを続行できません。
このとき、Turbo Boost が無効だったことに気がついた。
2. オーバークロックをするための準備
最新の BIOS に更新
予め、実際に設定する前に、最新の BIOS に更新した。
をダウンロード。 BIOS を起動し、
より、ダウンロードしたファイルを指定し、最新のバージョンにした。
デフォルトの設定値に戻す
設定を行う前に、BIOS の設定をに戻し、BIOS を再起動した。
- Exit > Load Setup Defaultsを選択。
- Exit & Save Changes を選択。
3. Ai Overclock Tuner でオーバークロック
a. オーバークロックのモードを選択
次に、自動的でオーバークロックするための設定を行う。
BIOS の Ai Tweaker > OC Tuner には、以下の3つの設定がある。
- Good Performance
- Better Performance
- Turbo Profile
上記を選択した後、Start auto tunningを実行した。念のため、自動設定を行う前に各々 BIOS の値をデフォルトに戻してから行った。
設定の結果、選択するタイプにより、Turbo Boost が無効になることが分かった。Good Performance の設定で実行したときにだけ、Turbo Boost が有効になった。
Good Performance では、それほど CPU に負荷をかけないので、この設定で様子を見る。
b. Turbo Boost が有効であることを確認する
自動設定が行われた後、 OS が起動する。再起動して BIOS 画面に戻る。
チェックする対象は、以下の項目。
- Ai Tweaker
- Advanced
- Intel(R) SpeedStep(TM) Tech : Enabeld
- Intel(R) TurboMode tech : Enabled
c. 省電力機能 C ステートを有効にする
省電力のための C ステート も有効にしておいた。
LGA1156版Core i7/i5を使いこなすBIOS設定法 | Core i7/i5全貌解明 | DOS/V POWER REPORTによると、
Core i7/i5では、アイドル時の消費電力を低減する省電力機能「Cステート」が改良され、C6まで用意されている。ただ、理由は分からないが大半のマザーボードでこの機能が無効化されており、有効化するにはBIOS設定を変える必要がある。
さらに明らかになったYonahの姿 ~拡張されたC4ステートでさらなる省電力を - 笠原一輝のユビキタス情報局
OSによるCPU利用率が低く、シングルスレッドの処理しか行なっていない場合には、2つあるCPUコアのうち1つは遊んでいる状態になるので、それをスリープさせることで、CPUの消費電力を少しでも下げよう、という試みだ。
ACPIではCPUの電力の状態をC0~C3の4段階で規定されている。それぞれどのような状態かと言えば、次のようになっている
・C0 通常動作状態:OSなどでアプリケーションなどが実行されている
・C1 Halt状態:Halt命令の実行によりCPUコアのクロックが停止
・C2 クロック停止:CPUコアとバスのクロックが停止
・C3 Deep Sleep:クロック生成機も停止
・C4 Deeper Sleep:Vcc(CPUへの供給電圧)を低減
CPUはC0>C1>C2>C3と徐々にステートを変更していくことで、CPU内部のクロックを停止していき、徐々にCPUの動作を止めていくことをやっている。
BIOS 画面において、以下の設定を行った。
- Advanced
- Intel(R) C-STATE Tech : Enabled
- C State package limit setting : Auto
d. Q-Fan コントロールを有効にする
BIOS の値をデフォルトに戻したことにより、ファンの動作を自動調整する Q-Fan コントロールが無効になった。
BIOS の画面において、以下のように有効にした。
- Power
- CPU Q-Fan Control : Enabled
- CPU Q-Fan Profile : Turbo
- Chassis Q-Fan Control : Enabled
- Chassis Fan Profile : Turbo
4. 自動設定後に微調整
a. オーバークロックの基礎知識
オーバークロックの基本は、ベースクロックを上げる際、メモリが動作できる範囲を超えないようにメモリクロックを下げておくこと。
ASCII.jp:メモリモジュールオーバークロック指南|Windows 7で行なうオーバークロック
メモリのバスクロックとCPUのベースクロックは密接な関係があり、通常、ベースクロックを変えると、メモリのバスクロックもそれに伴って変わる(…)。CPUクロックと同様に、ベースクロックとメモリバスクロックは比例関係にあり、ベースクロックにメモリクロック比率をかけたものが、メモリバスクロックとなるのだ。…
CPUをオーバークロックしようとして、ベースクロックを上げていくと、メモリバスクロックも上がっていき、CPUよりも先にメモリがオーバークロックの限界に達して、システムが起動しなくなったり、ハングアップしてしまうこともよくある。そうした場合は、メモリクロック比率を下げることで、ベースクロックを高くしても、メモリの限界に達せずにすむわけだ。
右図は、「秘められたCPUの力を引き出そう! 1/6 | 眠れるCPUを覚醒させろ! オーバークロックの神髄 | DOS/V POWER REPORT」より引用した。
b. 「オフセット電圧」に設定
追記(2013/02/06): 上記の自動設定により、「固定電圧」となった。デフォルトの「オフセット電圧」に戻した。
- Ai Tweaker
- CPU Voltage Mode : Offset
Offset Voltage : Auto
「固定電圧」ではベースクロックをほとんど上げることができなかった。また、「オフセット電圧」のほうがアイドル時の電圧が低い。必要なときにグッと電圧を上げてくれる。
c. ベースクロックを少し上げる
ベースクロックの値は次のように設定された。
d. メモリの設定
ベースクロックの変更に伴い、DRAM Frequency の設定を一段回下げた。
- Ai Tweaker > DRAM Frequency
e. CPU-Z で動作の確認
CPU の周波数は、ベースクロックと倍率により決まる。
CPUの周波数(クロック)・ベースクロック・倍率について | 自作パソコンの作り方によると、
周波数(クロック)というのは、ベースクロックと倍率をかけることで導き出されます。
CPU-Zで動作を確認すると、Turbo Boost により、倍率が 9.0 ~ 26.0 の間で変化していた。設定を変更したことによる変化を計算すると、
146 * 25 = 3650
160 * 25 = 4000
違いを少し体感できるかな。
f. メモリの電圧を固定する
追記(2013/02/06): BCLK Frequency を 170に設定したら、OS は辛うじて起動した。しかし、動画を再生中にブルー・スクリーンになった。
そこで、メモリの電圧を少し上げ固定することにした。
メモリの種類は DDR3 SDRAM。DDR3 SDRAM – Wikipediaによると、
… 動作電源電圧は、DDR SDRAMの2.5V/2.6V、DDR2 SDRAMの1.8Vに対し、DDR3 SDRAMは1.5V、DDR3L SDRAMは1.35V動作となっており、より一層の消費電力の低減、低発熱が実現されている。
自動設定にしていると、BIOS には 1.54 V と表示されていたので、それよりも少し電圧を上げて固定した。
この設定により、BCLK Frequency を 170に設定しても安定するようになった。電圧を上げたのは 10% 以内なので問題ないはず。
この設定だと、明らかに体感速度が違う。ただし、Prime95で CPU に負荷をかけたら、すぐに CPU の温度は 60度を超えた。CPU を 100% 使い切ることはないので、この設定で様子を見ることにした。
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